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Pisaku Continental
Trois pièces pour la peinture de Edvard Munch
エドヴァルド・ムンクの絵画のための3つの小品
ここではピアノソロ用に書いた3つの小品を紹介しています。
ムンクの3枚の絵画をモチーフに作曲しました。
絵画の印象から、調性の曖昧な現代音楽的作品に仕上がっておりますので、しっかりした調性・メロディーラインのはっきりした所謂“わかりやすい音楽”とは異なります。
※譜面はYouTube下のSheet Musicから開けますので印刷等ご自由にどうぞ。
Ⅰ-"Malinconia Laura"
1番 “メランコリー・ラウラ”
僕の好きな画家の一人であるムンクの絵画を題材にしています。
この絵画は"メランコリー・ラウラ"という名の作品で、ムンクの妹であるラウラを描いたもの。作品名そのままですが、ラウラは重度の鬱病を患っていたそうで、虚ろな眼をした病的な表情で描かれています。専門家によると、この作品の中に描かれているテーブルの模様は人間の脳の断面と言われており、なんとも不気味な印象のある作品です。
子供の頃、初めてこの絵を見たときに受けた大きな衝撃から、ずっと忘れられずにいます。
絵画にうまく重なっているかどうかわかりませんが、僕のイメージをそのまま音にしました。
感じ方は個々の感性の違いにより様々かと思いますが、少しでも何かを感じ取ってもらえればと思います。
Ⅱ-"Madonna"
2番 “マドンナ”
この絵画(リトグラフ)は"マドンナ"という名の作品で、様々な解釈がある作品です。
縁に描かれた胎児と精子から、ムンクの"受胎告知"であるという説もありますが、芸術に答えなどありません。
観て聴いて、個々に感じたものが答えでしょう。
曲に関してはムンク本人の添え書きを元にイメージしました。
「この世の全てが動きを止める束の間、貴女の顔に地上の美の全てが宿る。熟した果実のように朱い貴女の唇が、苦痛に耐えかねるかのように開く。屍の微笑のように。今や死の手が生に触れる。鎖は繋がれ、今は亡き幾千の種族が、後のこの世の幾千の世代と結ばれる。」
Ⅲ-"Spring"
3番 “春”
この絵画は"春"という名の作品です。
1889年、ムンクは重病を患いその回復の途上でこの作品を描きました。
この絵は結核で亡くなったムンクの姉の闘病時の思い出と、自分が体力を回復する過程をつなぎ合わせた、極めて自伝的色彩の強い作品です。
ムンクの作品は「生」と「死」をモチーフに作品を作り出すことをコンセプトとしており、この作品にもよく表れています。
全体的に「生」を白、「死」を黒で表したコントラストで構成されており、青白い顔をした病気の少女に対し、健康そうな血色の良い母親の横顔にも対照的なコントラストを出しています。
植木を乗せた窓からいっぱいに差し込む陽射しの明るさに併せ、カーテンが窓辺から入るそよ風に揺らぎ、爽やかな風がもたらす命の息吹が、重く暗い病室の中に吹きこむ様も、見事に対照的な印象で描かれています。
この「春」という作品を分析し音で表現しました。
「生」と「死」を表した白と黒のコントラストは、黒鍵と白鍵を極端に分離させて表現。小節ごと・拍ごと・左右の打鍵ごとに徐々に細かく分離させていきます。
病気の少女の表情と病室の重苦しさ、植木・風・陽射し・儚さの象徴であるガラス瓶に反射する光などから読み取れる春の爽やかさ、そして「生」と「死」。
それぞれの対照的な印象を感じ取って頂ければ幸いです。